バスガイドで唯一「通訳案内士」の資格を持つ通訳ガイド。「大切にしているのは海外のお客さま目線に立って考える事」

PROFILE.
森(もり)さん。バスガイド。ケイエム観光バス株式会社東京営業所所属。2001年4月キャリア(中途)入社。前職は新幹線のパーサーをしていた。ケイエム観光バスのバスガイドの中で唯一通訳案内士の資格を持つ。趣味は写真で、社内の写真コンテストでも優秀賞を受賞した。(取材日:2016年7月5日)

今回お話を伺ったのは、ケイエム観光バス株式会社でバスガイドを務める森さんです!森さんは、ケイエム観光バス株式会社のバスガイドの中で唯一通訳案内士の資格を持たれています。今回は、森さんに英語を学習する上でのコツや、資格取得のためにどんな勉強をされたのか、そしてバスガイドという仕事のやりがいを伺いました!

森さんは、なぜバスガイドになろうと思ったのですか?

私、旅行が大好きなんです。「いろんな場所へ行ける仕事がしたい」という思いから、前職は、新幹線のパーサーを務めておりました。
ですが、新幹線ですから行く先も限られていますし、お仕事も「どこかへ行く」ということが目的ではなく「販売」がメインのお仕事でした。「もっといろんな場所へ行けて、行った先でその土地をお客さまと楽しめるお仕事がしてみたい」と感じ、ケイエム観光バス株式会社のバスガイドへ転職しました。

実際にバスガイドとして働かれてみて、いかがでしたか?

全くの未経験だったのできちんと務まるか不安もあったのですが、イチからみっちり垣内コーチに教えていただきました。バスガイドのお仕事は本当にたくさんあって大変でしたが、それ以上に楽しいお仕事です。

バスガイドのお仕事の、どんなところが楽しいですか?

まず、勉強すればするほど土地の面白さが分かるところですね。小さい頃から、旅行した土地のパンフレットを集めてはノートに貼ってまとめるくらい旅行が好きなんです。ガイドの勉強をすればするほど「この土地って、こんな魅力があったんだ!」とか「こんな田舎に面白い観光地があったんだ!」などと新しい発見があります。やればやるほど深みの出てくる、いつも新鮮な気持ちでお仕事できる職業だと思います。
あとは、每日本当にたくさんのお客さまと出会えるところですね。「お客さまにどうやって喜んでいただこうかな?」「どうしたらお客さまにとって最高の1日になるかな?」と試行錯誤しながら色々と考えて自分なりのおもてなしをすることにもやりがいを感じます。

お客さまに楽しんでいただくために、どんな工夫をされているのですか?

ケイエム観光バスへ入社すると、研修の一環として歌を習うのですが「先生方から教えていただいた歌以外にももっとバリエーションを増やしたいな」と思い、歌の練習をしたりしております。
先日ご高齢のお客さまのツアーがあったのですが、銀座を通った時に「銀座カンカン娘」を歌わせていただきました。「よく知っているね」「とても楽しかったよ」などとお声がけ頂き、喜んでいただけてとても嬉しかったですね。調子に乗ってあんまり歌いすぎると「ガイドさん、歌いすぎだよ(笑)」と言われるので気をつけています(笑)
あとは、民話を分かりやすく、楽しくお伝えできるように紙芝居を作ったりもしています。

これ、森さんが描かれたんですか!?とってもかわいいですね!素敵です!

本当ですか?ありがとうございます。
他には、インターネットで簡単なクイズを探してきたりとか、先輩から心理テスト教えていただいたりしております。万が一、バスが渋滞にハマってもお客さまが楽しい時間を過ごせるように、每日情報収集は欠かせません。

常にお客さまのことを考えて工夫をされているのですね。お客さまからとても喜ばれるのでは?

そうですね、「ガイドさん、歴史詳しいんだね。とても面白かったよ!」「とても思い出に残る旅になりました。ありがとう!」などとお褒めの言葉をいただけた時はとても嬉しいです。
あとは、「声がとても綺麗だね!」「英語の発音がすごく綺麗だね!」と言って頂けた時も嬉しいですね。

英語と言えば、森さんはバスガイドの中で唯一「通訳案内士」の資格を持たれているとお聞きしました。
すごいですね!合格率が約20%(平成27年度)という難易度の高い資格ですが、どうやって勉強されたんですか?

2016年の2月に、5回目の受験で合格することができたので、道のりは長かったです。ずっと憧れていた「通訳ガイド」になれて、とても嬉しいです。
英語は、脳みそと辞書があれば、どこでも勉強できますよ!私は3ヶ月だけハワイに語学留学したこともありますが、ほとんどラジオやテキストを使いながら日本で勉強しました。

そうなんですか!「英語の勉強」と聞くと、やっぱり海外に長期で行ったりしたほうが身に付くのかな?といったイメージがありましたが、自身の努力次第なのですね。

日々の生活にどれだけ取り入れられるかだと思います。バスガイドになりたての頃、仕事の勉強と並行しなければいけなかったので、英語の勉強が思うように進まず悩んだことがありました。通っていた英会話教室の先生に相談したところ、「私は食器とか洗いながらブツブツ日本語練習しているよ!語学の学習は、どこでも出来るのよ」とアドバイスをもらったことで意識するようになりました。

森さんは、英語の学習をするためにどんなことをされているのですか?

移動時間などの、ちょっとした隙間時間に単語帳を見たり、寝る前の少しの時間にイヤホンで英語を聞いたり、毎日2,3行でもいいから英語で日記をつけたり、気になる単語があったらすぐに調べる癖をつけたり・・・できるだけ生活に英語を取り入れるようにしております。口を動かすと覚えるので、なるべく声に出すことが大切です。
私は洋楽も邦楽も好きなので、洋楽を聞いているときは頭の中で和訳したり、邦楽を聞いているときは反対に英語でなんて言うのかな?って考えています。サザンの歌詞の英訳は難しいですよ(笑)

今からでも出来そうなことばかりですね!これから2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、インバウンドのお客さまが増えていますが、森さんが海外のお客さまをお迎えする上で大切にされていることはありますか?

海外のお客さま目線になって考えることですね。日本人にとっては当たり前のことでも、海外のお客さまからすると驚くようなことってたくさんあるんですよ。
例えば、「自動販売機が外にある」ということも平和で犯罪の少ない日本にとっては当たり前ですが、海外だと当たり前ではありませんからね。
あとは、より海外のお客さまに伝わるような表現でご案内することも意識しております。例えば、スカイツリーやビルなどの高さのご案内をするときは、メートルだけでなくフィートでもお伝えする、などです。今はとても便利な時代で、Googleで検索すればすぐ調べられますので、お客さまがいらした国の単位でご案内するようにしております。

使う言葉の細部まで気を遣われているんですね。素晴らしいホスピタリティですね!今後の目標はありますか?

今は、資格取得に向けて勉強しています。フランス語とポルトガル語でも案内が出来るようになりたいんです。

英語の通訳案内士の資格を取得されたばかりなのに、すごい向上心ですね!尊敬します。

いえいえ、知り合いの通訳ガイドさんは3つの通訳案内士の資格を持っているんです。周りに知識欲旺盛な方が多くて、とても刺激されるんです。
とはいえ、日本語のガイドも英語のガイドもまだまだ奥が深いのでこちらももっと勉強していくつもりです。日々精進ですね。ケイエム観光バス株式会社に素晴らしい先輩方がたくさんいらっしゃるので、先輩方のあとを習っていこうと思っております。
最近は、私がブツブツと営業所で英語を勉強していたので(笑)その様子を見て他のガイドさんが「私も英語を勉強しようと思っているのだけど」と話してくれて、参考書を貸したり、ドライバーさんから「ベビーカーお持ちしましょうか?ってなんて言うの?」などと聞いていただく機会も増えました。
ちなみに、ベビーカーは和製英語なんですよ。海外の方に「baby car」とお伝えしても「子供のおもちゃ」という意味になってしまいます。「baggy」とか「baby carriage」が正解です。
こういった、仕事に活きるちょっとした私の知識を営業所のみんなに伝えることで、営業所のみんなにも貢献できることはとても嬉しく思います。これからも、さらに成長を目指して頑張っていきたいと思います。

森さん、ありがとうございました!