国際ハイヤー株式会社では2016年5月に開催された「伊勢志摩サミット(第42回先進国首脳会議)」をはじめ関連閣僚会議である「G7広島外相会合」「G7新潟農業大臣会合」「G7富山環境大臣会合」においてV.I.Pの送迎を行いました。合計144名のドライバー・職員がサミット関連の送迎に携わった中で、今回は実際に要人送迎や関係者送迎を担当した4名のドライバーたちにインタビューを行い、現地の緊張感や仕事の様子を伺いました。(取材:2016年6月15日)
伊勢志摩サミットでのドライバーの役割とは?
まずは皆さんの自己紹介と、伊勢志摩サミットでどんな仕事をしていたか教えてください。
菅野(かんの)です。1990年に入社し、ドライバー歴は26年です。伊勢志摩サミットではドイツのV.I.P送迎で防弾車の運転を担当しました。
坂入(さかいり)です。2007年に入社したのでドライバー歴は9年になります。伊勢志摩サミットではイギリスのV.I.P送迎で防弾車の運転を担当しました。
中野(なかの)です。2014年に新卒で入社したドライバーです。伊勢志摩サミットではフランスのV.I.P送迎を担当しました。
伊藤(いとう)です。中野と同じく2014年入社の新卒ドライバーです。私は伊勢志摩サミットが行われた賢島周辺ではなく、中部国際空港で日本の政務官の方々を空港ターミナルから飛行機の側までお送りする業務をしました。
伊勢志摩サミットならでは「防弾車」とは?
ハイヤードライバーの方が運転していた防弾車とは何なのでしょうか?
銃弾の貫通を防ぐことができるように設計されており、要人輸送によく利用される車です。外観は一般車両とあまり変わりませんが、車両が重いので加速が遅くなります。慣れるまでは運転に注意が必要です。
今回の伊勢志摩サミットに備えて、事前に栃木県で防弾車の訓練が2日間に渡って行われました。フルブレーキングなどの一般車両との違いや、車内の様々な装備について説明を受け、実際に走って感覚を確かめたりしました。驚いたのは、防弾車は空気圧が入っていなくても走行が可能だということです。多少ガタガタしたり、カーブで走りにくかったりしますが、特に問題はありませんでした。そういったように、何かトラブルが起きても対応できるような訓練も行う貴重な機会でしたね。
防弾車を運転するドライバーが各チームのリーダーとなって、私たちが運転するハイヤーをまとめてくださっていました。チームは他社のドライバーも混じって構成されているのですが、私の担当するフランスチームは国際自動車のベテランドライバーがリーダーでした。普段から官公庁関係の仕事を任されている方なので、緊張感が漂う現場でも堂々と振る舞っていたのが印象的でしたね。少しでも不明点や気になる点があったらチーム全員で確認する時間をきちんと取り、綿密な打ち合わせを重ねて当日に臨みました。
G8伊勢志摩サミットで心がけたこと
中野さんがおっしゃったように、ハイヤードライバーは普段から要人送迎などの業務を行っていますよね。今回の伊勢志摩サミットで特別心がけたことや、特徴的なことなどはあったのでしょうか?
要人送迎では車列を組んで走行します。警察車両3〜4台と、私たちが運転する車両3〜4台が一車両半くらいの車間距離で走る必要があります。一車両半というと約4〜5mほどでしょうか。高速道路ですと時速120〜130キロという速度で車間をピッタリと詰めて走らなければいけないので、訓練が必要です。そういった大規模な会議ならではの対応が今回の伊勢志摩サミットでの特徴かもしれないですね。
普段と異なる業務に慣れるため、私たちは伊勢志摩サミットが開催される5〜6日くらい前から現地入りをして、警察の方と走行練習をしていました。ドライブギアでは前方の車両とぶつかってしまうので、ギアを二速、三速と調整して一定の間隔を保って走り続けます。走行訓練の他にも警察の方々と当日走るルートを試走して、その際に選ぶべき車線や目印、その他地元の情報を伺い、当日に備えました。
やはり伊勢志摩サミットともなると、細かい事前準備もしっかりしたうえで当日に臨むんですね。
もちろん、今回のような国際会議で要人送迎の主要部分を担当するという業務を任せていただいたことは、とても光栄なことです。しかし、誤解を恐れずに申し上げるなら、ハイヤードライバーとしての送迎業務に差は無いんです。どなたをお送りする際も、「安全・確実・迅速・快適」という基本原則は変わりません。とにかく無事にお送りすることが何よりも重要であって、仕事の大小に関わらず私たちが意識すべきことです。
確かに心がけについては菅野が言った通りですね。業務的な面でお話すると、チームで仕事を行ったことが伊勢志摩サミットと普段の業務との違いですね。ハイヤー、タクシーに関わらずドライバーは基本的に1人で仕事を行います。ですが今回のように大規模な送迎では車列を一緒に組むドライバーとの連携や、警察車両との協力が必要です。なので送迎が終わった後は、他社の方であってもチームごとに信頼感が生まれて仲良くなることも多いんです。
なるほど!プロのドライバーとしての心がけは常に変わらないですが、チームプレイが加わったことで日常とは多少異なる場面もあったんですね。新卒ドライバーのお二人はいかがでしょうか?伊勢志摩サミットに臨むうえで心がけたことなどありますでしょうか?
国際ハイヤー株式会社のドライバー代表の1人として恥ずかしくないよう振る舞うことは意識しました。一般的に「サミットで要人送迎を担当するドライバーはベテランばかり」というイメージがあるかと思いますが、今回参加したドライバーの多くは20代だったんです。私たちがミスをすると、「やはり若手(20代)のドライバーはベテランドライバーと比べて慣れていないのだろうか」や「若い人に任せるのは難しいか」と思われてしまうので、普段以上に気を引き締めて業務にあたりました。
若手の方たちはかなりよく頑張ってくれたと思います。車列を組んだりすることは慣れていないと難しいものですが、大きな問題も無く、一生懸命取り組んでくれました。
伊勢志摩サミットを終えて
では、最後に今回の伊勢志摩サミットにドライバーとして参加された感想を教えていただけますか?
本当に貴重な体験でしたね。今回の伊勢志摩サミットに関わらせていただくことが決定してから、いつも以上に丁寧な運転を意識して通常の業務にあたっていたのですが、私が想像していた以上にベテランドライバーの方の運転が丁寧で驚きました。「ブレーキを踏んだことすら分からないような運転をした方が良い」といったアドバイスを受け、自分の中での基準が上がったと思います。今後ドライバーとして仕事を続けていくうえでもかなり役立つ経験になりました。
確かにドライバーとしての業務に役立つことをベテランドライバーから沢山学べた貴重な機会でした。大勢の方と協力してお客さまをお迎えする経験はかなり新鮮でした。国をあげての催しに、新米の自分が参加することに緊張もしましたが、皆さんの支えによって乗り切ることができました。お世話になった方々にとても感謝しています。
ハイヤードライバーとして何度か要人送迎に携わってまいりましたが、常に初心を忘れないようにいたいと思います。また何か大きな国際会議やイベントがありましたらまた是非とも関わらせていただきたいですね。
伊勢志摩サミットに関われたことは、諸先輩方が築き上げてきた「信頼」の証だと思います。素晴らしい機会に恵まれたことに感謝しつつ、今後は自分たちが次に繋げるための一翼を担うことを意識して普段の業務に臨みたいと思います。
皆さん本日は貴重なお話をお聞かせいただいて、本当にありがとうございました!