「企画が通らなくても自分で作るつもりだった」携帯を振るだけでタクシーが呼べるアプリ「フルクル」開発者の熱意

PROFILE.
澤井(さわい)さん。国際自動車(kmタクシー)株式会社 IT課 係長。2011年キャリア(中途)入社。趣味は映画鑑賞。(取材日:2017年11月17日)

携帯を振るだけでタクシーが呼べる!国際自動車(kmタクシー)初のアプリ「フルクル」って何?

「乗りたいタイミングで空車のタクシーが見つからない」「大通りまで歩かないとタクシーが捕まらない」などと困った経験はありませんか?

そんな不便さを解消してくれるのが、国際自動車(kmタクシー)提供のアプリ「フルクル」です。携帯を振るだけで、近くを走っている空車のタクシーを呼べるという世界初の便利なアプリです。

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今回は、その「フルクル」を開発された国際自動車(kmタクシー)株式会社のIT課 係長 澤井さんに開発秘話を伺っていきたいと思います!

いちユーザーとしてのアイデアを、技術者として情熱をもって実現させたプロジェクト

澤井さんは、なぜ「フルクル」を開発しようと思ったのですか?

仕事のアイデアをメモしておくノートに「こんなサービスがあったら面白いな」と書き留めておいた一つです。

仕事終わりに居酒屋で飲んで「さあ帰ろう」って時に、大通りまでタクシーを求めて歩いたりとか、空車のタクシーがいつ通るか分からないから後ろを振り返りながら歩いたりって大変じゃないですか?

「あ〜、お店で携帯を振るだけで、空車のタクシーが集まってくるようなサービスがあったら便利だし面白いな」って思っていたんです。

なるほど、ユーザーとしてのアイデアだったんですね!

上司に「こんなサービスを考えたんですが」と相談させていただいたところ、「すぐに役員にプレゼンしよう!」と言ってもらえました。そこから企画が通り、今回のリリースに至ったんです。

「会社で作らないなら自分で作りますから!」と上司に伝えていたくらいカタチにしたかったサービスなので、こうしてたくさんの方に提供できることになって嬉しいですね。

澤井さんの想いの詰まったサービスなんですね。「フルクル」の便利さはどんな点にあると思いますか?

まず、「タクシーを探さなくて良い」ということです。アプリを起動するだけで近くを走っているタクシーの位置を確認することができます。

昼間だと明るくて行灯(あんどん:タクシーの天井に設置されている表示灯。空車の際に点灯する)が点いているのかどうか分からないことがありますが、アプリを見れば空車かどうか一目瞭然です。

また、地図でタクシーの位置を確認できるので、「視界にタクシーは走っていないけど、実は一本隣の道に空車のタクシーが走っていた」という状況にも気づけるようになるので、これまで面倒だった「タクシーが捕まりやすそうな大通りまでとりあえず歩く」といったことをしなくて良くなりました。

空車のタクシーが近くを走っているかどうかが分かるようになるだけで、たくさんのメリットがありますね!

「迎車料金がかからない」ということもお客さまにとっては大きなメリットだと思います。

もちろん迎車では無いので、タクシーが携帯を振っているお客さまの元へ向かっている途中で別のお客さまの手が挙がってしまうと、そちらのお客さまをお送りしなければなりませんが・・・。ですがこれはデメリットではなく、よりお客さまのニーズに合わせてタクシーの利用の仕方を選んでいただけるようになったのではと思っています。

「確実に自分の希望するタイミングでタクシーに迎えに来て欲しい」というお客さまは迎車をご利用いただけますし、「迎車料金を払ってまでタクシーに来て欲しいほど急いではないけど、近くに空車のタクシーが走っているなら利用したい」「タクシーを探す手間を省けたら嬉しい」というお客さまにはフルクルをご利用いただければと思います。

確かに、緊急度や重要度に合わせて利用の仕方を選べるのは便利ですね!

お客さまの利便性が高まるだけではなく、タクシードライバーの営業支援にも

お客さまにとってのメリットを伺いましたが、タクシードライバーにとってのメリットはありますか?

もちろんです!タクシードライバーにとって「フルクル」が導入されたことによる一番のメリットは、「今まで見えなかったお客さまも見えるようになったこと」だと思います。

「見えなかったお客さまも見えるようになる」ですか?

タクシードライバーは、ナビ上でフルクルを振ってくださっているお客さまを確認することが出来るようになりました。今までは視界の中にいるお客さましか当然見えませんでしたが、ナビを確認することでより広範囲のお客さまを確認することが出来るようになったんです。街路樹やビルなどで見えづらかったお客さまも確認できるようになりますしね。

なるほど!タクシードライバーも営業がしやすくなったんですね!

さらに「需要予測」ができるようになったことにより、これから更にタクシードライバーのお役に立てるんじゃないかなと楽しみにしています。

今までは実際にお送りしたお客さまの情報しか得られませんでしたが、実車中でお客さまをお送りできなかったとしても、フルクルを利用して携帯を振ってくれたお客さま全員のデータ(振った場所、時間)を得ることができるんです。

お客さまがタクシーを必要とする時間帯や場所がわかるようになるんですね!

その通りです。今までは「ここの大通りからお客さまをお乗せした」というデータも、もしかすると「1本隣の車通りが少ない道からタクシーに乗りたかったけど、捕まらないから大通りまで歩いてきた」お客さまかもしれないですよね。

需要が可視化できるようになることで、意外とタクシーを必要とするお客さまが多い時間帯や場所が新しく発見できるかもしれません。

それは楽しみですね〜!

IT課でも、タクシードライバーでも、国際自動車(kmタクシー)の人間として大切にすることは同じ

「フルクル」開発にあたり、大切にしたことはありますか?

国際自動車(kmタクシー)は「ホスピタリティ」を大切にしていますが、これはタクシードライバーに限った話ではありません。我々本部の人間も日々大切にしています。

私がIT課の人間として社員やお客さまに対して発揮できるホスピタリティは、「使いやすいものを提供すること」だと思っています。

ですから、今回の「フルクル」を開発する上でも、お客さまやタクシードライバーにとって使いやすいものを提供できるよう、「気軽に使えるアプリ」をコンセプトに進めました。

開発を進めていく中で、色んなことを試したくなったり、「こんな機能もつけたら便利なんじゃない?」など意見をいただくこともありましたが、そのたびに「みんなにとって使いやすいアプリかどうか?」という観点に立ち返ってその観点で意思決定するよう意識していました。

確かにものづくりをする過程って、新しいことを試したくなったり、いいものを全部詰め込みたくなるので、シンプルにするって実はものすごく大変な作業ですよね。
使いやすいアプリを提供するために、特にこだわった点はありますか?

まず、フルクルは会員登録の必要がありません。「国際自動車(kmタクシー)の他のサービスもご案内できるよう、お客さまの情報を登録していただこう」という意見もありましたが、アプリをダウンロードしたあと、「会員登録してからでないと使えない」となると、個人情報を打ち込む手間が増えるのでユーザー目線に立って考えるとすごく不便ですよね。

お客さまがタクシーをもっと便利なカタチで利用できるサービスを提供することがフルクル開発の目的ですから、会員登録無しで利用できるようにしました。

機能を「タクシーを探して呼ぶ」という機能に限定したこともこの理由からです。

「作って終わり」ではない。タクシードライバーとお客さまと共にサービスを育てていきたい

逆に、開発の過程で生まれた新しい視点やアイデアはありましたか?

沢山ありますよ。フルクルは携帯を振ってタクシーを呼んだあと、タクシードライバーがお客さまを見つけやすいように画面が明滅する機能がついています。

これは、開発の過程で全営業所を回ってタクシードライバーから意見を伺った際に生まれたアイデアです。「夜間は場所によってはお客さまが手を挙げているのが見えづらいことがある」「近くまで行った時に人が複数人いた場合、どの方がフルクルで呼んでくださったお客さまなのか分かるようにしてほしい」といった意見をいただき、この機能が生まれました。

なるほど〜!タクシードライバーと一緒につくったアプリなんですね。

本当にそうです。もっというと、タクシードライバーとお客さまと一緒に育てていくサービスだと思っています。

お客さまも一緒に育てるんですか?

フルクルは2017年11月にリリースされましたが、リリースしてすぐにお客さまから「いいアイデアだから、もっとここをこうして欲しい!」「ここを改良して欲しい」などとお声をいただいています。もっとより良いサービスにしていくための貴重な意見ですのでお客さまやタクシードライバーの実際に使用した声を聞きながら、改良を重ねて双方にとって最高のサービスに育てていきたいと思っています。

フルクル開発を通して感じた、部署を超えた関係性

作って終わり、ではなくより良いサービス提供のために「みんなで一緒に育てていく」という考え方は素敵ですね。

このように考えられるのも、フルクル制作を通して、「一緒にやる」という経験ができたからだと思います。

といいますと?

国際自動車(kmタクシー)のIT課の業務は多岐に渡りますが、「PCの初期設定をお願いします」とか「ここに電話をいれてください」とか「新しい予約システムを作って下さい」など他部署から依頼を受けて、作って、納品という流れの仕事が多いので、「社内にある制作会社」みたいな感覚が強かったんですよね。縦割り感が強いというか。「IT課は社内の引きこもり」みたいで(笑)

社内の引きこもり(笑)

ですが、フルクルは他部署の協力なしではとても制作できませんでした。

そこで「協力してもらいたいんです」と声をかけさせていただいたところ、みなさん忙しいのに喜んで協力してくれました。タクシードライバーをはじめ、営業や企画・広報など部門を超えてみんなで一緒につくったアプリです。「アプリのリリース、楽しみにしているよ!」「澤井さん、期待しているよ!」と声をかけていただいたことも本当に励みになりました。会社のみんなには本当に感謝しています。

今までの「部門毎に役割を分担してそれぞれ頑張る」というやり方ではなく「部門を超えて一緒に頑張る」という仕事の仕方を経験できたことは、私にとってとてもいい経験ができたと思っています。

国際自動車(kmタクシー)のロゴをアイコンにあえていれなかった理由

澤井さんは、これからフルクルをどんなサービスに育てていきたいですか?

実は、フルクルのアイコンには国際自動車(kmタクシー)のロゴを入れていませんし、国際自動車(kmタクシー)らしいデザインにもなっていません。なぜなら、将来的には国際自動車(kmタクシー)だけではなく、都内のタクシー全てが利用できるサービスにさせていきたいという想いがあるからです。

もちろん「国際自動車(kmタクシー)のタクシーにしか乗らない」と弊社を選んでくださるお客さまもたくさんいらっしゃいますが、業界を盛り上げるためには、お客さまにとって「タクシー」という存在をもっと身近に、便利に感じていただきたいと思っています。

お客さまにとって、「タクシー呼ぶならフルクル」というくらいスタンダードな存在になれたら嬉しいですね。

会社という枠を超えて、業界を盛り上げていきたいと奮闘する澤井さん、かっこいいです!最後に、今後の目標を教えていただけますか?

今回、自分のアイデアが「フルクル」というアプリを通して一つ世に生み出せたことを、技術者としてとても嬉しく思います。

まだまだ構想中のサービスはたくさんありますし、フルクルを他社さんも利用できるような展開も考えていきたいと思っています。

これからも「使いやすいものを提供する」ということを大切に、アイデアをカタチにしていければと思います。

澤井さん、本日は貴重なお話ありがとうございました!