宮本(みやもと)さん。バスドライバー。ケイエム観光バス株式会社シティバス事業部所属。2002年タクシードライバーとして国際自動車(kmタクシー)株式会社にキャリア(中途)入社。2010年よりバスドライバーに転籍。(取材日:2016年2月2日)
今回は路線バスドライバーの宮本光一さんにインタビューを行いました。路線バスを運転するかたわら、新人バスドライバーの教育も行う宮本さんに仕事内容やバスドライバーとしてのやりがいを伺ってまいりました!
宮本さん、今日はよろしくお願いします。宮本さんは、2010年からバスドライバーとして働いていらっしゃるんですよね。
はい。2010年に入社した当初は、都内の某デパートのシャトルバスのドライバーを2年間行っていました。その後から、ケイエム観光バス株式会社が運営する路線バス「お台場レインボーバス」と※「kmフラワーバス」のドライバーをしています。
※kmフラワーバスは2017年5月31日の運行を最後に廃止されています。当記事は2016年2月に行われた取材をもとに構成されています。
すごく可愛らしいデザインの路線バスですよね。どんな場所を走っているんですか?
青色の車体の「お台場レインボーバス」は「品川駅」と「田町駅」を起点に、レインボーブリッジ、お台場エリアの住居や商業施設周辺などを巡回しています。
花柄の「kmフラワーバス」はJR・東京モノレール「浜松町」駅と、お台場エリア・東京ビックサイト(国際展示場)の間を運行しています。
なるほど!宮本さんのお仕事はこうした路線バスの運転なんですよね。
そうですね。路線バスの運転に加え、指導乗務員として新人バスドライバーの教育も行っています。
新人バスドライバーの教育というと?
バスドライバーとして営業所に配属される方の運転の習熟度合いは様々です。他社でバスドライバーを経験していた方もいれば、異業種から転職された方もいます。個人のレベルに合わせて路線バスドライバーの仕事内容を教えるのが私の仕事です。
新人路線バスドライバーはどんなことを学ぶのでしょうか?
バス停の名前や運行ルート、車体の点検方法、バスの構造など色々あります。バスドライバー経験者は2週間ほどで研修が終わりますが、未経験から始めた方ですと2ヶ月くらいかけてじっくり教え込みます。
やはり、バスの運転は一般の乗用車と比べて異なる点が多いのでしょうか?
全く違いますね。私は元タクシードライバーなのでプロとしての運転歴は長いですが、バスの運転は一般車と全く異なります。
元タクシードライバーなんですね!
地元静岡県で6年、国際自動車(kmタクシー)で8年ほどタクシードライバーとして働いていました。地図を見たり、運転したりするのが好きなのでとても楽しく働いていました。
元タクシードライバーということは、運転もかなりお上手だと思うのですが、タクシーとバスの運転はどんなところが違うのでしょうか?
まず、視界が全く違います。バスはフロントガラスが大きいので視界がとても広いです。タクシーならドアミラーで左右確認をするとき首が動くと思いますが、バスでは目線を左右に動かすだけで周りが見渡せます。横から来る自転車などもよく見えますので、その点はバスの方が運転しやすいかもしれません。
なるほど。逆に難しいとことはありますか?
車体幅や長さが一般車とだいぶ異なるので、感覚を掴むまでは戸惑うかもしれませんね。でも、慣れてしまえば視界が広く、車高も高いのでとても気持ち良く運転できますよ。
確かに、大きな車を運転する気持ち良さはバスドライバーならではですよね!宮本さんが新人バスドライバーに教える時に心がけていることはありますか?
じっくり丁寧に教え込むことですね。時間はいくらかかっても良いので、とにかく高い技術を身につけてほしいと思っています。
それはなぜでしょうか?
バスドライバーは高い運転能力が絶対に必要なんです。よく言うのが、「バスは他の交通手段のお手本」ということです。
お手本ですか?
バスは公共交通機関であり、多くのお客さまの命をお預かりしています。また、車体が大きいため周囲に与える影響も大きいです。バスがフラフラと運転していたら一目瞭然です。ですからバスドライバーには絶対的な技術が必要なんです。
運転がうまいバスドライバーと、そうでないバスドライバーの差はどんなところにあるのでしょうか?
足の使い方ですね。
足ですか?
ハンドルさばきよりも足の使い方です。あまり運転がうまくないバスドライバーは、進みたかったらアクセルペダルを踏んで、止まりたかったらブレーキペダルを踏むと思っているようです。
え、違うんですか?
ブレーキは踏むものではありません。撫でるものです。特に都内は信号が多いので、減速するたびにブレーキペダルを踏んでいたら振動も多く、酔いやすい運転になってしまいます。
どうしたら良い運転になるのでしょう?
信号が変わるタイミングを予測して、エンジンブレーキで減速します。そしてブレーキペダルを段階的に優しく踏んでいくんです。運転の出来はアクセルワークで決まります。いかにお客さまが快適に過ごせる運転ができるかがバスドライバーの腕の見せどころです。
なるほど!宮本さんがそんなに運転上手になった理由は何なのでしょうか?
私もまだまだ努力している最中ですが、きっかけは静岡でタクシードライバーをしていた頃のお客さまの一言です。「そんな荒い運転じゃ、お金払えないよ!」とお叱りを頂いてしまったことがあるんです。
自分では気をつけていたつもりですが、まだまだ未熟だったと気づき、安全運転をさらに意識するようになりました。他のタクシードライバーと情報交換をするなど色々工夫しました。
どんなテクニックがあるんですか?
例えば、道路が若干ガタガタするポイントがあるとします。乗用車では何でもない振動でもバスでは車体が大きく揺れます。そういう時はハンドルを道に合わせてカタカタと震わせるんです。するとスムーズに走行することができます。
そんな裏技があるんですね!そういったことも新人バスドライバーさんに教えるんですか?
私が持っている技術はすべて伝えたいと思っています。新人でも私より上手くなってほしいです。バスは車体が大きい分、良い運転ができたときの達成感も大きいんです。バスを運転する気持ち良さを最大限に感じることができるように、個人が持つスキルを底上げして長所を引き出してあげたいと思っています。
宮本さんに教わるバスドライバーが羨ましいです。
最後にバスドライバーに興味がある方にメッセージをお願いします。
バスドライバーに求められる資質は向上心だと思います。運転が好きで、技術を高めていきたいと思っている方なら未経験であってもどんどん成長できますし、私も全力でサポートします。
丁寧な運転をしてお客さまに「ありがとう」という言葉をかけていただけると本当に嬉しいですよ。ぜひ皆さんに挑戦していただきたいです。